東本願寺東山浄苑では昭和48年の開苑当初より、様々な防災対策を自主的に取り組んできました。
しかし、外部との接点となる通路は一本の参詣路のみであることから、大谷暢順当財団理事長は平成15年、佛法恩惠の心を旨として、巨大災害発生時に於ける年間約40万人に及ぶ参詣者の人命保護の重要性に鑑み、「東本願寺東山浄苑防災対策委員会」を結成しました。
早速、浄苑の防災調査を行った同委員会は、巨大地震の危険性の高い花折断層が存在する上、境内地が東山に連なることから、山火事による類焼の危険性も充分にあり得るため、緊急避難道の整備が急務と答申しました。
これを受けて、東本願寺東山浄苑護持会では、緊急避難道建設の許認可を求めた約5千人の署名を京都市長へ手交。大谷理事長も行政等に依存しない自主防災事業として、早急な計画策定を同委員会に委嘱しました。
平成20年には、候補地の土地測量等を行って計画案をとりまとめ、護持会の事業として建設することが決定しました。市街化調整区域である周囲の環境保全も配慮しながら、可能な限り、自然の形状を活かし且つ、巨大災害時に参詣者が境内から公道に退避できる京都初となる自主防災道路を、護持会の寄進によって平成22年に着工しました。総面積は約6,700平方メートルで、同年5月に完成しました。
このほか、ライフライン断絶時の消火用水にと境内で井戸を掘削、その地下水を防火用水池となる常楽堂曲水に供給しています。
世界遺産、国宝、重要文化財等を有した多数の寺社が存在する京都市内に於いて、緊急避難道路規模の自主防災事業を行ったのは当財団のみで、国土交通省近畿地方整備局と京都市から表彰状が授与される等、関係者から高い評価を得ています。