チベット佛教最高指導者のダライ・ラマ14世法王猊下(以下、法王)が11月9日、京都の社寺では初となる東山浄苑東本願寺(京都市山科区)への公式参詣を行いました。大谷暢順本願寺御法主台下(以下、台下)は法王と共に人類の仕合せを願い、佛法興隆に歩み出す共同声明を宣言しました。
東本願寺は明治21年(1888)、第22世現如上人が日本で初めてチベットに使僧・能海寛(のうみゆたか)を派遣してダライ・ラマ13世法王に公式親書を送る等、日本佛教界に於けるチベット佛教との交流の先駆者でした。戦争等で途絶えたものの、今年に入って台下と14世法王が大阪で面談。法王から京都の社寺では初めてとなる公式参拝が申し入れされ、約130年ぶりに交流が再開されました。
法王は「活佛(かつぶつ)」、台下も「弥陀の代官」としてともに私たち衆生(しゅじょう)の「善知識」であり、その済度に向けた菩薩行に邁進してきました。東京での邂逅(かいこう)でも親鸞聖人が仰いだ七高僧(しちこうそう)の1人・龍樹(りゅうじゅ)菩薩の遺徳を偲んで、人類の心の安寧(あんねい)をどう導いていくか等、感応道交(かんのうどうこう)の意見交換を行ってきました。
この公式参詣には、会所の東山浄苑東本願寺嘉枝堂(かえどう)本堂に全国から約600人が参集。「佛法が混迷する国際社会を照らす一筋の光明になることを」と述べた大谷光輪本願寺御門主台下の主催者挨拶で幕開けしました。
そして、法王を歓迎する京都きらら学園(京都市下京区)の幼稚園児による「ありがとうの花」の合唱で両師が入堂。満堂の参詣者が佛旗を振って歓迎し、両師は外陣(げじん)で御本尊阿弥陀如来に参詣者とともに合掌しました。会所は、子供たちを抱擁する法王の姿等から笑顔と法悦に包まれる中、園児と洛南小学校(京都府向日市)の児童が両師に花束を贈呈。外陣に用意されたソファに法王と台下が並んで座り、法王の「お言葉」と続きました。
法王は「21世紀を生きる佛教徒」として、佛法を論理的思考でとらえることを強調したほか、「仕合せになること」とは思いやりの心を持つことと説き、会場からの質疑応答にも応じました。台下はこれを受け、「恩を感じる心が大切。恩を与える者と、恩を受けてそれを有難いと感じる者の両者の感応道交がなければ仕合せになれない」と話し、両師は笑顔で手を取り合いました。
そして、両師による佛法興隆共同声明の署名に大きな拍手が贈られた後、法王がチベットから持参した釈尊坐像を台下に贈呈、台下は公式参詣を歓迎する感謝状を手交しました。
最後に法王からは、み佛への供物や貴人に贈るカタと呼ばれるチベットの白布を、台下は自ら考案した経典のサンスクリット語・スートラから命名した修多羅袈裟(しゅたらげさ)を互いに掛け合い、佛法興隆に歩み出す決意を誓い合いました。
この後、会場を移して大谷家による歓迎の昼食会では、法王が扁額にチベット語で佛語を揮毫しました。