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日本人の精神文化に深く根差した文学(フィクション)を求めて 京都発の文学賞 親鸞賞



-親鸞賞-

浄土真宗御開山親鸞聖人の遺徳を偲び顕彰するとともに、日本の文化と文学の振興に寄与するために、平成十二(二〇〇〇)年、本願寺維持財団(当時:現一般財団法人本願寺文化興隆財団)が創設した。日本の宗教風土とそこに根差した精神文化に基づく、人間の深い希求の心を感じ取ることの出来る優れた作品に贈呈している。



選考委員

加賀乙彦(作家)
多くの文学賞は一年間の視野内で選ぶため、長年月をかけた超大作は除外されてしまう。また純文学、大衆文学のジャンルにとらわれて、枠を超えた果敢な試みも無視されてしまう。親鸞賞は、そういう風土に埋もれた作品を発掘顕彰したい。

中西進(文学者)
親鸞賞は、日本人の精神文化に深く根差した業績を顕彰するところに、大きな意義があります。そこで十分に構想力をもって一つの宇宙を築いた作品が注目されるはずです。受賞作群が、今後の重要な文学史の系列を作る予感があります。

沼野充義(文学者)
優れた文学作品とは、人間の心が産み出すことのできるもっとも精妙で奥深いものです。それは宇宙の起源や究極の素粒子を探ること以上にスリリングな経験をもたらし、精神文化を豊かにするのだと信じています。

最新の親鸞賞


第9回親鸞賞

            

   受賞作:澤田 瞳子氏 『若冲』

若冲
澤田瞳子氏著
(文藝春秋刊)

-あらすじ-

奇才の画家・若冲が生涯挑んだものとは――
 今年、生誕300年を迎え、益々注目される画人・伊藤若冲。緻密すぎる構図や大胆な題材、新たな手法で周囲を圧倒した天才は、いったい何ゆえにあれほど鮮麗で、奇抜な構図の作品を世に送り出したのか?
 底知れぬ悩みと姿を見せぬ永遠の好敵手―池大雅、円山応挙、与謝蕪村、谷文晁、市川君圭・・・絵師たちの運命が京の都で交錯する。著者渾身!至高の芸術小説。

受賞作 澤田瞳子氏著『若冲』(集英社)

受賞者紹介
昭和52年京都府生まれ。同志社大学文学研究科博士前期課程修了。平成22年、『孤鷹の天』で小説家デビュー。平成23年同作で第17回「中山義秀文学賞」を最年少受賞。24年、『満つる月の如し 仏師・定朝』で第2回「本屋が選ぶ時代小説大賞」、25年、第32回「新田次郎文学賞」受賞。著書に『日輪の賦』『夢も定かに』など。
授賞式・記念シンポジウム・・・平成28年12月6日(火)
 第9回親鸞賞(本願寺文化興隆財団主催)の授賞式と記念シンポジウムが平成28年12月6日、京都市山科区の東山浄苑東本願寺で開催されました。小説『若冲』で歴代最年少受賞を果たした作家の澤田瞳子氏をはじめ、選考委員を務める加賀乙彦氏、中西進氏、沼野充義氏と、約350名の聴衆が参加しました。
 授賞式では、大谷暢順理事長より澤田氏へ表彰状と副賞が授与され、会場は大きな拍手に包まれました。また、前年度をもって本賞選考委員から引退した黒井千次氏の長年にわたる貢献と功績に対して、大谷理事長より感謝状および記念品が贈呈されました。
 基調講演で、大谷理事長は受賞作を「三千年の日本文化の潮流を継承した、常に自己を顧み、そこに救を求めていく小説」と評価。現代の理性偏重主義や自省なく他者を批判しがちな風潮に警鐘を鳴らし、各々が互いに「恩」を感じあって生きる道を説きました。
 記念シンポジウムでは、「京都から世界へ 日本のこころ」をテーマに、パネラーの選考委員と受賞者が活発な議論を繰り広げました。今年が生誕300年にあたる若冲の芸術精神、日本人の「信仰」の概念など内容は多岐にわたり、京都・日本の精神文化を世界へ向けて顕彰する有意義な機会となりました。

平成28年親鸞賞受賞式平成28年親鸞賞受賞式2

授賞式の様子               黒井氏記念品贈呈の様子

東山浄苑東本願寺でのシンポジウム1東山浄苑東本願寺でのシンポジウム2東山浄苑東本願寺でのシンポジウム3

記念シンポジウムの様子         澤田瞳子氏                加賀乙彦氏

東山浄苑東本願寺でのシンポジウム4東山浄苑東本願寺でのシンポジウム5

中西進氏                  沼野充義氏


次回親鸞賞

第10回親鸞賞は、平成30年10月頃に発表、同年12月頃に授賞式・公開シンポジウムを開催します。

※平成29年は蓮如賞の授賞式となります。詳細はこちらを参照下さい。

過去の親鸞賞

第8回親鸞賞

              

    初の2作同時受賞


櫛挽道守
木内昇氏著
(集英社)

-あらすじ-

幕末の木曽、薮原宿。才に溢れる父の背中を追いかけ、一人の少女が櫛挽職人を目指す。周囲の無理解や時代の荒波に翻弄されながらも、ひたむきに、まっすぐに生きる姿を描き出す、感動の長編時代小説。

受賞作 木内昇氏『櫛挽道守』(集英社)

受賞者紹介
1967年生まれ。東京都出身。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。2009年、第2回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞を受賞。2011年、『漂砂のうたう』で第144回直木賞を受賞。著書に、『新選組裏表録 地虫鳴く』『茗荷谷の猫』『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』など。

村上海賊の娘
和田竜氏著
(新潮社)

-あらすじ-

『のぼうの城』から六年。四年間をこの一作だけに注ぎ込んだ、ケタ違いの著者最高傑作! 和睦が崩れ、信長に攻められる大坂本願寺。毛利は海路からの支援を乞われるが、成否は「海賊王」と呼ばれた村上武吉の帰趨にかかっていた。折しも、娘の景は上乗りで難波へむかう。家の存続を占って寝返りも辞さない緊張の続くなか、度肝を抜く戦いの幕が切って落とされる! 第一次木津川合戦の史実に基づく一大巨篇。

受賞作 和田竜氏『村上海賊の娘』(新潮社)

受賞者紹介
1969年大阪生まれ、広島育ち。早稲田大学政治経済学部卒。2007年『のぼうの城』で小説家デビュー、同書は累計200万部(単行本と文庫)を超えるベストセラーとなり、2012年映画公開された(脚本も担当)。著書に『忍びの国』『小太郎の左腕』『戦国時代の余談のよだん。』があり、本書『村上海賊の娘』は小説第四作となる。
授賞式・記念シンポジウム・・・平成26年12月2日(火)
 日本人の精神に深く根ざした文学作品(フィクション)に贈られる第8回「親鸞賞」の授賞式・記念シンポジウム(主催:一般財団法人本願寺文化興隆財団 後援:文化庁、京都市、京都府、国際交流基金、京都商工会議所《第2部より》)が平成26年12月2日、京都市山科区の東山浄苑東本願寺で行われました。受賞作は、木内昇さんの『櫛挽道守』と和田竜さんの『村上海賊の娘』で、初のダブル受賞となりました。
 授賞式後、大谷理事長の基調講演では、浄土真宗開立の祖・蓮如上人の「知れるところを問ふ」という言葉をめぐり、西洋の先哲の言も紐解きながら、その真意に迫りました。その上で、現代を生きる私たちには「知れるところ」を問うことこそが必要であり、さらに言えば「知る」よりも「わかる」ことにこそ感動がある―。この「知れるところを問ふ」というアジアの叡智を、ここ京都から世界へ発信していくことを提言しました。
 大谷理事長の基調講演を受けて、我が国の碩学、加賀乙彦氏・黒井千次氏・中西進氏の同賞選考委員と受賞者木内氏・和田氏による「日本人の智恵―京都から世界へ―」と題した記念シンポジウムへと続き、文化、宗教・芸術・文学等から多角的に日本文化を論じ合い、国内外での日本文化、精神の昂揚に貢献しました。
 なお、このシンポジウムの要旨は、『文藝春秋』平成27年3月号(芥川賞発表号/平成27年2月10日発売)に掲載される予定です。

平成26年親鸞賞受賞式

授賞式の様子

東山浄苑東本願寺でのシンポジウム1東山浄苑東本願寺でのシンポジウム2東山浄苑東本願寺でのシンポジウム3

記念シンポジウム「日本人の智恵―京都から世界へ―」の様子

第7回(平成24年)


半島へ
稲葉真弓
(講談社)

-あらすじ-

その春、「私」は半島に来た。森と海のそば、美しい「休暇」を過ごすつもりで----。たった一人で、もう一度、人生を始めるために----。

受賞作 『半島へ』(講談社)

受賞者紹介
1950年(昭和25年)、愛知県生まれ。73年『蒼い影の痛みを』で婦人公論女流新人賞、80年『ホテル・ザンビア』で作品賞、92年『エンドレス・ワルツ』で女流文学賞、95年『声の娼婦』で平林たい子文学賞、08年『海松』(みる)で川端康成文学賞、同作ほかで10年芸術選奨文部科学大臣賞、11年『半島へ』で谷崎潤一郎賞、中日文化賞を受賞する。著書に『ミーのいない朝』『午後の蜜箱』『環流』『砂の肖像』『千年の恋人たち』などがある。日本大学芸術学部特任教授。
授賞式・記念公開シンポジウム・・・平成24年12月8日
第7回「親鸞賞」(主催=財団法人本願寺維持財団(当時:現一般財団法人本願寺文化興隆財団)、大谷暢順理事長)の受賞式、記念公開シンポジウムが平成24年12月8日、京都市山科区の東山浄苑東本願寺で行われた。受賞式では大谷理事長の主催者挨拶後、受賞者・稲葉氏が「宗教や哲学、日本文化の神髄にも届いたと評価され、嬉しい」と受賞の喜びを語った。引き続き、同賞選考委員と受賞者による「日本人の智恵 ―超クールジャパン―」と題したシンポジウムへ。紋切り型の日本文化、また、漫画・アニメ・ゲーム等の「クールジャパン」だけではない、これら文化の基礎を成す日本人の思想、精神文化を発信していく「超クールジャパン」について、来場者からも意見が出るなど活発な議論が繰り広げられた。

平成24年親鸞賞受賞者-稲葉真弓氏東山浄苑東本願寺での親鸞賞受賞式シンポジウム「日本人の智恵 ―超クールジャパン―」

シンポジウム「日本人の智恵 ―超クールジャパン―」
第7回親鸞賞記念公開シンポジウムの内容はこちら

第6回(平成22年)


宮尾登美子
(中央公論新社刊)

-あらすじ-

西陣の呉服商・菱村吉蔵は斬新な織物を開発し高い評価を得る。やがて法隆寺の錦の復元に成功し、織物を芸術へと昇華させていくが……。絢爛たる錦に魅入られた男の生涯を描く宮尾文学の集大成。

受賞者紹介
1926年4月13日、高知県高知市生まれ。高坂高等女学校卒業。1962年『連』で婦人公論女流新人賞、1973年『櫂』で第9回太宰治賞、1977年『寒椿』で第16回女流文学賞、1978年『一絃の琴』で第80回直木賞、1983年『序の舞』で第17回吉川英治文学賞、2008年第56回菊池寛賞、2009年に文化功労者を受賞。他の著作に『陽暉桜』『岩伍覚え書』『鬼龍院花子の生涯』『伽羅の香』『天璋院篤姫』『藏』『クレオパトラ』など。映像化、舞台化作品も多数。
授賞式・記念公開シンポジウム・・・平成22年12月6日
授賞式で受賞者の宮尾登美子氏が受賞の喜びを挨拶。引き続き行われた記念シンポジウムでは、主催者である大谷暢順財団理事長が「日本文化興隆に向かって~『外交文化』の創造~」と題した基調講演を行った。これを受けて、選考委員らが議論を交わした。

第5回(平成20年)

道元禅師(上・下)
立松和平
(東京書籍刊)

-あらすじ-

日本仏教の革命者・道元禅師。その全生涯と思想を描ききる初の大河小説。日本から中国へ、膨大な取材と九年にわたる執筆。これまで至難とされた人間道元の実像と思想の全貌に迫る立松和平渾身の記念碑的作品、ここに成る。

受賞者紹介
1947年、栃木県宇都宮市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。在学中に『自転車』で早稲田文学新人賞。インド放浪等を経て、宇都宮市役所に勤務。79年より文筆活動に専念。80年『遠雷』で野間文芸新人賞、97年『毒―風聞・田中正造』で毎日出版文化賞、2002年歌舞伎座『道元の月』の台本で第31回大谷竹次郎賞受賞。本賞受賞作『道元禅師』で07年に第35回泉鏡花文学賞も受賞。著書多数。
授賞式・記念公開シンポジウム・・・平成20年12月9日
授賞式後、親鸞賞が第5回を迎えたことを記念し、「日本文化を拓く~京都から世界へ~」をテーマとしたシンポジウムを京都市と共催。主催者である大谷暢順財団理事長の基調講演、受賞者と選考委員が日本文化について多彩に語り合う公開座談会が行われた。
大谷暢順理事長は、佛教伝来から平安、鎌倉、室町の佛教史を紐解かれ、浄土真宗開立の祖・蓮如上人の教えを紹介し、「わが国の佛教は、神道の教えを融合、一元化させた神仏習合を、驚くべき寛容の叡智でもって成し遂げた。この融和融合の精神を基に築かれた日本文化、京都文化を世界に発信することが、国際的に貢献するところ大きい」と講演(当日は大谷飛鳥財団常務理事が代読)。
これをうけて、選考委員と受賞者立松氏は、日本の精神文化に宿る寛容の叡智、日本人の信仰形態、やさしさの情の文化、自然と共存した国日本などについて活発な議論を繰り広げた。
京都・文化マニフェスト
会の最後に、大谷理事長、門川大作京都市長、選考委員四氏が署名した「京都・文化マニフェスト」を宣言。この「京都・文化マニフェスト」は世界の首脳へ送付された。

第4回(平成18年)

新リア王(上・下)
高村薫
(新潮社刊)

-あらすじ-

55年体制を生きた政治家の王は80年代半ば、老いて王国を出た。代議士の父と禅僧の息子の、魂の対決-『晴子情歌』で母と向き合った彰之は禅僧となり10年後、政治家の父・榮を雪の草庵に迎えた。長い年月を経て初めて対座した父と息子の魂は、聖と俗のはざまでせめぎ合い、燃え上がる。

受賞者紹介
1953年、大阪市生まれ。国際基督教大学卒。外資系商社勤務を経て、1990年『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞を受賞。1993年『リヴィエラを撃て』で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。同年、『マークスの山』で直木賞を受賞。他の著作に、『地を這う虫』『レディ・ジョーカー』『晴子情歌』などがある。
授賞式・記念公開シンポジウム・・・平成18年12月7日



授賞式では、主催者である大谷暢順財団理事長より「主催者の立場としては、宗祖の名を冠した賞の中で、初めて正面から、真剣に佛法の事が語られているこの大著が選び出されました事に喜びを禁じ得ません。今年はあたかも佛紀2550年に当たり、何か佛縁の深さをしみじみ感じさせられるところであります。」と挨拶。引き続き、「現代文学が切り拓いた新世界-高村薫『新リア王』をめぐって」と題したシンポジウムを開催、選考委員四氏と受賞者の高村薫氏が参加した。壮大かつ緻密な『新リア王』の小説世界をめぐり、選考委員から高村氏へ選評と質問が飛び交った。作品を生み出す動機について尋ねられた高村氏は「不思議だからこそ眺める、わからないからこそ書くということがある」と答え、今後新しい分野へも挑戦したいと述べた。これら活発な議論に、多くの聴衆が耳を傾けた。

第3回(平成16年)

静かな大地
池澤夏樹
(朝日新聞社刊)

-あらすじ-

明治初年、北海道の静内に入植した和人と、アイヌの人々の努力と敗退。日本の近代が捨てた価値観を複眼でみつめる、構想10年の歴史小説。

受賞者紹介
1945年北海道生まれ。都立富士高卒。詩集、翻訳などの文筆活動を展開。88年発表した『スティル・ライフ』で中央公論新人賞、芥川賞を受賞。『真昼のプリニウム』『ブッキッシュな世界像』『バビロンに行きて歌え』『ダマリンドの木』など著書多数。近年『読書癖』『南鳥島特別航路』など独自のエッセイでも注目を集めている。
授賞式・記念公開シンポジウム・・・平成16年12月4日


第3回親鸞賞授賞式が平成16年12月4日催され、選考委員の四氏、並びに受賞者の池澤夏樹氏もフランスより出席した。授賞式後、「アイヌ-家庭内伝説から文学の地平へ」をテーマに、受賞作、日本文化に関するシンポジウムを開催。アイヌの視点が現代に投げかける様々な意味、小説家が書く「歴史」などについて活発な議論がくり広げられた。選考委員の黒井千次氏は、同作品について「日本の精神文化を、異質の視点、つまり日本人の中で日本人を考えるというのではない、もう一つ別の視点からあぶり出そうとするところに視点の新しさがある。」と述べた。選考委員の中西進氏は「静かな大地が語った自伝といった趣を呈している作品で、大変重厚な日本人の精神文化に深く根ざしたという親鸞賞に相応しい作品」と賞賛した。

第2回(平成14年)

虚竹の笛
水上勉
(集英社刊)

-あらすじ-

古代中国に生まれ、朝鮮半島を経て日本へ伝えられたという尺八。素朴で懐かしい音色の小さな楽器に打ち込んだ人物たちの事績を追いながら、日中交流の歴史を描き出す畢生の歴史小説。

受賞者プロフィール
福井県生まれ。少年期に禅寺で修行をし、その後、薬売り、教師、編集者、洋服の行商など30を超える職を渡り歩く。1959年社会派推理小説『霧と影』で脚光を浴び、1961年『雁の寺』で直木賞を受賞。『宇野浩二伝』で菊池寛賞、『一休』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。1992年より、長野県北御牧村の山荘で暮らす。
授賞式・・・平成14年12月6日

受賞作『虚竹の笛』は、尺八を日本に伝えたとされる虚竹らを要に、日本と中国のかかわりや精神風土を、エッセーとフィクションを交えて描かれている。大谷暢順理事長は今回の授賞について、「水上さんは、常に仏教に関連した佛縁の深い作品を書かれている。我が国でも数少ない『佛教作家』と言えよう。親鸞賞にふさわしい作品を選んでもらい、大変嬉しく、喜びを押さえきれない思いだ。」と賞賛。式には、選考に当たった加賀乙彦氏、黒井千次氏、瀬戸内寂聴師、中西進氏の四委員も出席。選考委員の加賀乙彦氏は「大胆な構成で、自由自在に豊かな文章で書かれた傑作」と称賛。大病後で体調管理が気遣われた水上勉氏だが、「出席したい」と、仕事場の長野県北御牧村から車いすで出席。祝福を受けながら、「仕事をしてきてよかった。ありがとうございます」と挨拶された。

第1回(平成12年)

沈める城
辻井 喬
(文藝春秋刊)

-あらすじ-

国際資本の企みに敗れた経営者・荘田邦夫。革命運動に挫折した詩人・野々宮銀平。遙か南の古代文明から照射される戦後日本の思想なき繁栄の欺瞞―再生を希求する物語。

受賞者のことば
今回、小生の長編小説『沈める城』を第一回親鸞賞に選んでいただき、大変嬉しく、その責任の大きさに恐縮しています。この作品は、外資の策謀によって破滅に追い込まれる経営者とその再生、南のある共和国の滅亡の歴史の探索に生命をかける詩人、その二人の関係性のなかに敗戦後日本の思想的、精神的頽廃を浮び上がらせることを意図して執筆致しました。審査された方々にご理解いただけたことを嬉しく思っています。
授賞式・・・平成12年12月6日

親鸞聖人の遺徳をしのび顕彰するために創設されたフィクション文学賞・親鸞賞の第1回授賞式が東山浄苑東本願寺で開催された。選考委員である加賀乙彦氏は、同作品について「詩と小説のジャンルを越えた大作で、重層する幻想世界を見事に定着させている。親鸞賞の門出に、ふさわしい作品を得た事を心より喜んでいる。」と賞賛。同じく選考委員である瀬戸内寂聴師も、「辻井喬さんの作品は力作である。この人はいつでも渾身の力をこめた力作ばかりを書きつづけている。経済界で大きな仕事をしたのに、辻井さんの心には永遠の文学青年の純な想いが燃えつづけている。いくらでも自分を語りたい熱い想いがあるのだろう。第一回の受賞作品として、こういう力のこもった作品を得たことは、結構なことであった。」と述べられ、辻井氏の受賞と親鸞賞の門出を祝した。